先日、痙攣重積で救急搬送された症例と出会い知識不足を感じたのでまとめてみました。
J Hospitalist Networkでよくまとめていただいていたので、さらにUp to dateで調べたことと併せてまとめました
後述する痙攣重積時の対応を理解するのに、ベンゾジアゼピンがGABA受容体に作用することを理解しておく必要があります。
【病態】

ベンゾジアゼピン系薬物はγ-アミノ酪酸(GABA)A型(GABA A)受容体の特定の部位に結合し、抑制性神経伝達物質の親和性を亢進させます。慢性使用は、γ-アミノ酪酸(GABA)A受容体を介したシグナル伝達を低下させるため、中止することで抑制性シグナルが減少して興奮性の臨床症状を引き起こすと言われています。
【原因・リスク】
半減期の短い薬剤またはチアゾール部位を持つ薬剤の使用
高用量、力価、および使用期間
定期的に使用した後の突然の中止
【症状・臨床像】
ベンゾジアゼピン系薬剤の使用中止後2~3日以内に始まり、10~14日間、あるいはそれ以上持続します。
数日以内に始まるものと思っていましたが、先日の症例は1ヶ月以上経過してからの痙攣重積として搬送されてきました。「短時間作用型=離脱も早期に出やすい」であり、長時間作用型のベンゾジアゼピンの離脱では発症も遅くなるとのことです。
症状としては、精神症状、身体症状に及びその両方が現れます。

一般的な症状としては、頻脈、高血圧、発汗、不安、易刺激性、不眠、頭痛、筋肉痛、震え、吐き気、嘔吐が挙げられますが、痙攣重積や脱水の結果として急性腎障害・肝不全・脳浮腫などを起こすことがあります。
【検査・診断】
基本的に病歴と除外診断になります。
鑑別するべき疾患として、アルコール中毒・離脱症状、低血糖、てんかん、脳血管障害、髄膜脳炎、甲状腺クリーぜをはじめとして代謝性障害、精神疾患の悪化、処方される薬によるセロトニン症候群や悪性症候群が挙げられます。
またアルコールも同じGABA受容体に作用した離脱症状を起こします。重症度評価としてアルコール離脱で使われる改訂版臨床研究所アルコール離脱評価尺度(CIWA-Ar)が有効です。
【初期治療】
基本的に支持療法(痙攣があれば止めるなど)と、漸減が重要です。
1.支持療法
痙攣重積のpresentationとして来院することもありますが、痙攣重積に従って対応することが必要です(バイタルの安定と発作を止める)。薬剤としてはGABA受容体に作用するベンゾジアゼピン系薬物のジアゼパム or ロラゼパム、ミダゾラムのいずれかの静脈注射を行います。レベチラセタム(LEV)は抗痙攣薬としては使われますがSV2Aに作用するため、作用点が異なり離脱症状に対する介入にはならないことに注意。

(Nat Rev Drug Discov. 2024 Sep;23(9):682-708.PMID: 39039153 より引用)
人工呼吸器管理を要する患者や重度の離脱症状でベンゾジアゼピン抵抗性の場合、同じGABA受容体に作用する(1)フェノバルビタール 10mg/kg IVまたは(2)プロポフォール が選択肢としてあります。(興奮した精神症状に対しては向精神病薬のハロペリドール5mg IVまたは筋注を検討)
精神状態や呼吸状態が安定してから点滴をもともとの内服に切り替えます。
2.漸減
重度の離脱症状であれば、初期は上記と同じように点滴でまずは同用量で再開します。
ジアゼパム用量が1日30mgを超える場合は4~6週間以上かけて徐々に中止すべきとされています。外来での漸減も可能とされてはいますが、非常に高用量(1 日あたりジアゼパム 100 mg 以上に相当する用量)からの離脱には入院が必要です。背景の疾患によってはうつ病や不安症など精神疾患が悪化しないように精神科との相談が必須です。ここらへんの漸減方法についてはJ hospitalistで丁寧にまとめてくださっていたので下のリンクでご紹介させていただきます。

まとめきれないところもありますが、リスク評価と予防、それから病歴から疑うことが重要です。
「数日前から体調が悪くて飲めなかった」のような病歴から明らかなパターンもあるとは思いますが、「1ヶ月前から通院を自己中断していたらしい」意識障害で搬送では本当にベンゾジアゼピン離脱なのかわからない症例もあります。意識障害へのアプローチとして、頭部MRIや髄液検査、脳波検査などで他の鑑別疾患を除外することが必要です。
また背景疾患として精神疾患があることも多く、栄養不良や偏食がありそうであればWernicke脳症の合併がないかも頭に入れておきましょう。
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参考文献
・Up to date (2025/9/7 最終アクセス)
・N Engl J Med 2017;376:1147-57
・J Hospitalist Network 明石医療センター 総合内科 https://www.amc1.jp/departments/diagnosis/naika/jhn/cq_191107.pdf


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